música bonita seleção
issue 04: musica bonita brasireila (2012.11.10)
“Arabesca” from ANDRE MEHMARI, CHICO PINHEIRO, SERGIO SANTOS / Triz (2012) 現在のブラジル音楽をその高い音楽性でリードする、アンドレ・メマーリ(ピアノ)、 シコ・ピニェイロ(ギター)、 セルジオ・サントス(歌、ギター)の3人によるコラボレート。3人独自の音楽性を保ちながら、各々の色彩が一つに混じり合い、独創的な彼等ならではの音楽を創り上げている。音の立体感、抑揚、透明な美意識、そして色彩感が圧倒的。
“Vento Bom” from ANDRE MEHMARI / Canteiro (2011) アンドレ・メマーリのソロ・アルバム。クラシック、ジャズ、ブラジル音楽など様々な音楽を飲み込んだ、現在のブラジルを代表する音楽家。壮大で煌めくピアノのタッチと、知性の輝きを感じさせる楽曲は他の追従を許さない。表題曲にはシコ・ピニェイロ(ギター)と、彼の妻でブラジル音楽ファン永遠のディーバ、ルシアーナ・アウヴィス(歌)が参加している。
“Reza” from ANTONIO LOUREIRO/ Só (2012) ミナス在住の若きSSW/マルチ楽器奏者、アントニオ・ロウレイロのセカン・ドアルバム。複雑な楽曲と高度でカラフルな演奏はファースト・アルバムから多くの注目を集めたが、本作ではそこに原初的な躍動感が加わることにより、刮目すべきアルバムを創り上げた。その壮大で知的で胸を打つ楽曲はすでにブラジル音楽を超越した存在として大きな注目を浴びている。
“Sonora” from TATIANA PARRA & ANDRES BEEWSAERT / Aqui (2011) サン・パウロの歌姫タチアーナ・パーハと、アルゼンチンのコンテンポラリー・フォルクローレを代表するアカ・セカ・トリオのピアニスト、アンドレス・ベエウサエルトとのデュオ。ブラジルとアルゼンチンを繋ぐこの二人、美意識が極めて近い。故にかくも親密で透明な世界を構築し得たのだ。「美しい」という言葉では、凄く陳腐に感じてしまう。それほどに珠玉の作品。
“Feltro No Ferro” from TELEBOSSA / S.T. (2011) ベルリンを中心に活動するブラジル人シコ・メロと、ドイツ人ニコラス・ブスマンとのユニット、”テレボッサ”のアルバム。ミニマルな弦のアンサンブルと、シコ の繊細な歌声、極めて控えめな打楽器とエレクトロニカによって、知的でいて感覚的な世界を創り上げている。実験的でありながら全く難解さを感じさせないのは、二人の美意識の故であろう。
“Moça Feia” from VINICIUS CANTUARIA / Indio de Apartamento (2012) ニュー・ヨークに活動拠点をおくSSW、ヴィニシウス・カントゥアリア。以前はカエターノ・ヴェローゾのバンドのドラマーでもあった。ビル・フリーゼルやアート・リンゼイ、坂本龍一などとの交流により、クールで退廃的で醒めたエロティシズム感じさせる、独自の感覚のアルバムを発表し続けている。本作は彼の最新作で、表題曲のピアノは坂本龍一。
“Coração Sem Saída” from RENATO BRAZ / Casa de Morar (2012) ヘナート・ブラズの歌声は大地に根をはる古木のように重厚であり、また風に大きく揺れるその枝の様に優美でもある。選び抜かれた楽曲に、北東部的な素朴なリズムを多用しつつ、ストリングスを絡めたアコースティックな演奏が瑞々しい。繊細な表現力と素朴な力強さ、これこそヘナート・ブラズだけの世界観。表題曲は、作曲/ギターに巨匠ドリ・カイミ。
“Guru Ram Das” from RENATO MOTHA E PATRICIA LOBATO / Sunni-e (2012) すでに山形にも2回来て頂いたミナスの美しき夫婦デュオ、ヘナート・モタとパトリシア・ロバート。近年はヨガのマントラを主題とした楽曲を取り上げることで音楽的幅がさらに広がっている。本作は彼等の最近作で、2枚組の全編がマントラ。透明感溢れる二人のハーモニー、優美な旋律が素晴らしい。歌詞はサンスクリット語。
“Tenho Dó Das Estrelas” from ZÉ MIGUEL WISNIK / Indivisivel (2012) サン・パウロの重鎮、ゼー・ミゲル・ウィズニキ。極めてシンプルなサウンドにのせて歌を紡ぐ。彼だけの洗練と美意識に貫かれたセンチメンタルな旋律と、全編を覆い包む知性の煌めき、優しくまた滋味深い歌声。確固たる世界観を持った唯一無二の存在感は、密やかでいて宝石の様だ。サンパウロ大学でブラジル文学の教鞭をとりながら音楽活動を行っている。
“Jardim de Inverno” from PIERRE ADERNE/ Bem me Quer Mar me Quer (2012) 私、ライナーを担当させて頂きました。だからというわけでは無く、これは愛すべきアルバムです。本作はピエール・アデルニが、ポルトガルを中心に、ブラジル、カーボ・ヴェルでなどポルトガル語圏の著名なアーティストとコラボした作品。ピエールの音楽性をしっかり保ちながら、ポルトガル語圏の音楽家との親密で美しい交流が収録されています。
「美しい音楽を聴く」大人のための音楽ガイド第4回。中南米の音楽の中にあって、常に洗練された音楽を提供し続けるブラジルの音楽。その洗練の根本はミクスチャーにあります。移民国歌ブラジルは、人種的混血をむしろアイデンティティーとして成立していますが、音楽もまさに混血の国。自国の伝統的な音楽も混血によって生まれたものですが、現在もその貪欲な食欲は衰えず、様々な形態の音楽を飲み込み咀嚼することで進歩を遂げています。今回はそんなブラジルの音楽から、ここ1-2年を代表する美しい音源を紹介します。