música bonita seleção
「美しい音楽を聴く」大人のための音楽ガイド、第3回。情報のグローバル化に伴って、ジャズは今や全世界的に共通の音楽的言語となりました。それはむしろオーソドックスなジャズの輝きやマジックを失わせてしまいましたが、逆に世界各地の民族的な旋律やリズムと結びつき、ミクスチャーされることによって、今までとは違った新たな輝きを見せています。今回はローカルな音楽と、ジャズとの組み合わせによって刺激的な音楽を創り上げている10組のアーティストを紹介します。題してグローカル・ジャズ。
issue 03: glocal jazz (2012.09.01)
“Ani Aff” from AVISHAI COHEN / Seven Seas (2010) アヴィシャイ・ コーエン:1970年イスラエル生まれのベーシスト/作曲家。チック・コリアに認められ、共演もある名匠。自己のアイデンティティーである中東的な旋律を、ウードなどの民族楽器も用いてジャズと融合し、独自の音楽として昇華させている。本作は通算12枚目のアルバムで、エキゾチックでスリリングな演奏に圧倒される。
“Hear I Jah” from NEW ZION TRIO / Fight Against Babylon (2011) ニュー・ザイオン・トリオ:ジェイミー・サフト(p.)、ラリー・ゲレナディア(b.)、クレイグ・サンティアゴ(dr.)によるトリオ。ルーツ・レゲエ/ダブ・サウンドの土臭さと、ピアノ・ジャズの洒脱さ、そして洗練されたメロディーの邂逅により、未だかつて無い新鮮な音楽を作り上げている。クールで緩くてグルーヴィなキングストン発の快作。
“Mantrería” from CHANO DOMINGUEZ / Piano Ibérico (2010) チャノ・ドミンゲス:スペインのカディス出身のジャズ・ピアニストで、1960年生まれ。本作は、カホンなどのパーカッションにパルマス(手拍子)やカンテ(フラメンコ・ヴォーカル)等を加えたフラメンコの編成によるフラメンコ・ジャズ。フラメンコの情熱がジャズと融合した、官能的で血の騒ぐ音像。
“Xam-Xam” from KORA JAZZ TRIO / Part III (2008) コラ・ジャズ・トリオ:西アフリカを代表する弦楽器“コラ”をフィーチャーした、ジャズ・トリオ。メンバーはジェリ・ムサ・ジャワラ (kora)、アブドゥライ・ジャバテ (p.)、ムサ・シソコ(perc.)の3人。卓越した技量に裏打ちされた3人による音楽的交信はスリリングで圧倒的。体が動かずにいられない。まさに土着と洗練の極み。
“Tambores” from HUGO FATTORUSO Y REY TAMBOR / Emotivo (2007) ウーゴ・ファットルーソ:1943年モンテビデオ生まれ。出身地ウルグアイのみならず、ブラジル、アルゼンチンの音楽とも関わりの深い南米を代表するマエストロ。本アルバムでは、アフロ由来のウルグアイ伝統のリズム「カンドンベ」をベースに、ウーゴのジャジーなピアノとヴォーカルが絡むサウンドが刺激的だ。
“Sar Kangi” from ENSEMBLE SHANBEHZADEH & MATTHIEU DONARIER TRIO / Zâr : Jazz & Music From South Iran (2009) アンサンブル・シャンベーザデー:南イランの打楽器とネイヤンバン(バグパイプ)とネイジュフティ(ダブルフルート)によるユニット。本作では以前から共演を繰り返して来たフランスのジャズ・トリオ(マチュー・ドナリエ・トリオ)との共演アルバム。ヨーロピアン・ジャズとペルシャ湾のトランス音楽との濃密なる共演。
“Princesita Huanca” from JEAN PIERRE MAGNET Y SERENATA DE LOS ANDES / S.T. (2011) ジェアン・ピエル・マグネト:ペルーのジャズ・シーンの大御所。ペルーの民俗音楽、アンデスのフォルクローレと、ジャズを融合することを試み、 その結果生まれたのが、このセレナータ・デ・ロス・アンデス。トラディショナルなアンデス各地の祝祭音楽をベースに、それを現代的に構成してはいるが、そこには原初的な情動が息づいている。
“La Mendiga” from KIP HANRAHAN / At Home In Anger (2011) キップ・ハンラハン:NYアンダーグラウンドの鬼才。ヒスパニック系移民の多い地域で生まれ育った彼は、ラテン系音楽に親しんで育った。1979年のデビュー以降、ラテンのエッセンスを加えた前衛的ジャズを指向。本作でもラテン・パーカッションを用いて複雑かつ重層的な音の坩堝を創り上げている。この曲のヴォーカルはブランドン・ロス。
“Samba de Mulher” from GAFIEIRA SÃO PAULO / S.T. (2008) ガフィエイラ・サン・パウロ:ガフィエイラとはリオで生まれた音楽形態で、ダンス・ホール向けのサンバ+ジャズ。そのガフィエイラをサン・パウロの気鋭のミュージシャンが演奏するプロジェクトがこのガフィエイラ・サン・パウロ。メローでダンサブルで洗練されたビックバンド・ジャズサンバ。歌は、注目の女性歌手ヴェロニカ・フェフィアーニ。
“Voz” from FEDERICO ARRESEYGOR / Espirales (2009) フェデリコ・アレセイゴール:アルゼンチンはラ・プラタ生まれの作曲家/ピアニスト。所謂コンテンポラリー・フォルクローレを指向する気鋭のアーティスト。カルロス・アギーレ等に比べ、よりジャズ的でアクティヴなアプローチを中心としているが、根底にあるフォルクローレ的で純粋な美意識は共通のものである。