música bonita seleção
issue 01: música contemporánea de Argentina (2012.06.17)
“Los 3 Deseos De Siempre” from CARLOS AGUIRRE GRUPO / Crema (2000): カルロス・アギーレ:1965年生まれ。多くの音楽家の尊敬を集める偉大なピアニスト/作曲家/歌手。ブエノスアイレスから遠く離れた川の畔、パラナ市に居を構え、自然に囲まれた環境で創作活動を行っている。フォルクローレをベースとしながら、素朴な情感と洗練された音楽は、聴くものすべてを優しく包み込む。本作は一時は「幻の名盤」と言われたCarlos Aguirre Grupom名義の1枚目のアルバム。
“Carcará” from ACA SECA TRIO / Avenido (2006) アカ・セカ・トリオ:ファン・キンテーロ(ギター/歌)、アンドレス・ベエウサエルト(ピアノ)、マリアーノ・カンテーロ(パーカッション)の3人によるユニット。本作は彼等の2ndアルバム。カルロス・アギーレとともにコンテンポラリー・フォルクローレを日本において広く知らしめる火付け役となった。ファン・キンテーロはカルロス・アギーレとも親交の深い、盟友的存在。アギーレの音楽に比べ彼等の音楽はよりポップで陽性、時に教会音楽的響きもある。
“Otra Vez El Mar” from PUENTE CELESTE / Canciones (2009): プエンテ・セレステ:サンチャゴ・ヴァスケス(パーカッション)、エドガルド・カルドーソ(ギター/歌)、ルーカス・ニコチアン(ピアノ)、マルセロ・モグレフスキー(リード)、ルシアーノ・ディゼンチャウス(ベース)の5人組の4thアルバム。圧倒的な演奏力と、ジャズ、フォルクローレ、ワールド・ミュージック、現代音楽などが絶妙にミックスされた、ポップかつ実験的で、どこかユーモアがある無国籍なサウンドを作り上げている。
“Rosa y Dorado” from SEBASTIAN MACCHI, CLAUDIO BOLZANI, FERNANDO SILVA / Luz De Agua (2005): セバスチャン・マッキ(ピアノ)、クラウディオ・ボルザーニ(ギター/歌)、フェルナンド・シルバ(ベース)。カルロス・アギーレの主催するレーベル、”Shagrada Medra(シャグラダ・メドラ)”からのりリース。タイトル通り「水の輝き」の様に静謐な美しさを持った傑作。セバスチャンはカルロス・アギーレ直系のピアニスト。またフェルナンドはカルロス・アギーレ・グループのベーシスト。
“Tu Universo Es Infinito” from JAVIER ALBIN / Las Mañanas El Sol Nuestra Casa (2010) ハビエル・アルビン:カルロス・アギーレとも親交があり、セバスチャン・マッキの親密な友人で、ピアノ奏者にして作曲家。ハビエルのピアノを中心に、儚げな女性のスキャットを加えた、コンテンポラリー・フォルクローレの新たな名盤。美しい旋律と、静謐で洗練されたサウンドが素晴らしい。これもShagrada Medraからのリリース。
“Las Casa De Las Abuelos” from FEDERICO DURAND / EL Extasis De Las Flores pequenas (2011): フェデリコ・デュランド:アルゼンチン出身、注目のサウンド・クリエーターの2ndアルバム。霞んだギターやピアノの音と、ブエノスアイレスでのフィールド・レコーディング、そして微かなノイズと電子音。淡い記憶を遡行するようなサウンド・スケープ。確固たるメロディーを持たないが、優しくまどろむ様な音が実に優しく心地良い。ルクセンブルグのOwn Recordsよりリリース。
“Tongo 2” from DIEGO SCHISSI QUITETO / Tongos (2010) ディエゴ・スキッシ:1969年ブエノスアイレス生まれのピアニスト/作曲家の2ndアルバム。ディエゴのピアノを中心に、バイオリン、バンドネオン、ギター、ベースによるクインテット。ピアソラの流れを汲むタンゴと、室内楽や現代音楽、ジャズ等を内包した、情熱的で繊細で、かつ緊張感に溢れた音楽を創りだしている。フォルクローレをベースとした音楽とはまた違った新鮮な魅力に溢れている。
“Anfibio” from LISANDRO ARISTUMUÑO / Mundo Anfibio (2012) リサンドロ・アリスティムーニョ:1978年生まれ。現在のアルゼンチンを代表するSSW。本作はリリースされたばかりの5枚目のアルバム。何かに急かされている様な切迫した彼の歌声と、アフリカ、中近東、インドなど様々な音楽的要素を詰め込んだ近未来的なサウンドで、徹底的に練り上げられた総天然色の無国籍ポップ/ロック。タイトルは「両生類」の意味。
“La Mendiga” from SPINETTA / Un Manana (2008) スピネッタ(ルイス・アルベルト・スピネッタ):昨年肺がんのため惜しくも逝去したアルゼンチンロック界最大のカリスマ。その影響はロック界に留まらず、アルゼンチン音楽界全体に大きな影響を及ぼした。独特の浮遊感のあるメロウでプログレッシブなサウンド、醒めた感覚の中に潜む毒、成熟した歌声。ちなみにキケ・シネシもスピネッタの歌詞に大きな影響を受けたと言う。
“Danza Sin FIn” from QUIQUE SINESI / Danza Sin Fin (1998) キケ・シネシ:1960年ブエノスアイレス生まれ。現在のアルゼンチンを代表するギタリスト。「キケ・シネシは、アルゼンチンで今まで知り合ったなかで、最も優れたギタリストだ。タンゴだけでなくフォルクローレの演奏もこなすマルチアーティストだね。(中略)本当に秀逸なギタリストだよ。」(故アストル・ピアソラ・グループのピアニスト、パブロ・シーグレル)カルロス・アギーレの盟友。今回の来日でその流麗なギターで、多くのファンをうならせた。
「美しい音楽を聴く」大人のための音楽ガイド。第1回は、カルロス・アギーレを中心として注目を集めるアルゼンチンの音楽を取り上げます。タンゴやフォルクローレなどの伝統的で純血なイメージのあるアルゼンチンの音楽ですが、近年はアルゼンチン音響派を経て、さらに興味深い方向性を示しています。伝統的な音楽を踏まえつつ、ジャズ、クラシック、ブラジル音楽など様々な音楽的記憶の下に、アーティストの内なるものとして自然に成立した音楽的ミクスチャーは、今までのアルゼンチン音楽とは異なる洗練を産み出しています。そのリスナーの多くはタンゴやフォルクローレのリスナーではなく、むしろそういう音楽とは縁のなかったリスナーが主体となっています。今回はコンテンポラリー・フォルクローレを中心に、今注目すべき10組のアーティストを紹介いたします。